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国土交通省は17日、第1回「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」(座長:中城康彦明海大学不動産学部教授)を開催。表示ルールに係る論点・検討の方向性等を検討した。
同制度は、2016年4月施行の建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律によって定められたもの。現行法では、建築物の販売または賃貸を行なう事業者に対して、販売・賃貸する建築物について、エネルギー消費性能の表示に努めなければならないこととされている。改正法(22年6月公布)によって、建築物の販売・賃貸時の表示事項および表示方法等の遵守事項を国土交通大臣が告示で定めるとともに、告示に従って表示していないと認める場合、国土交通大臣が販売・賃貸事業者に対し、告示に従って表示を行なうよう勧告することができるなどの措置が追加された。制度の施行は、公布後2年以内とされている。
同制度が強化されたことを受け、同検討会では、建築物の省エネ性能の表示ルール(省エネ性能に関して表示すべき事項、表示の方法その他遵守すべき事項)、表示制度の施行に向けた環境整備の進め方等を検討する。
今回事務局が示した論点・検討の方向性(案)では、消費者等にとって分かりやすく、販売・賃貸事業者にとって取り組みやすい、フィージブル(実現可能)な省エネ性能表示の仕組みを目指すとした。
新築建築物における表示の時期や場所については、遵守すべき事項として、「具体的に限定して定める方法」と「特定の手段やタイミングは限定せず、現行告示と同様、取り得る手段を列挙し、そのいずれかによって表示する方法」が想定できるとした。事業者自ら表示を行なう場合と他人に委託して行なう場合について、区別して定めるかどうかについても検討の必要がある。また、新たな表示ルールが、事業者への勧告等の措置に紐付いていることを踏まえ、表示事項のうち必須とするものは、必要十分なものに絞り込む方向で検討。必須事項と推奨事項に区別して内容を精査することを示した。
省エネ性能の表示方法は、一次エネルギー消費量について、設計一次エネルギー消費量の基準一次エネルギー消費量からの削減率により、省エネ性能を表示するとともに、緑から赤のバー表示やBELSの多段階表示(星の数)等について、分かりやすさの観点から統一を図った上で、削減率とセットで表示することを挙げた。再生可能エネルギーの取り扱いについては、遅くとも30年度までに義務基準をZEH・ZEB水準に引き上げる政府方針を踏まえ、30年以降も継続的に使用できる表示形式にすることを提案した。
外皮性能は、住宅(義務基準・誘導基準ともに外皮基準あり)では、現行の省エネ基準への適否に加え、新たに創設された誘導基準への適否も表示するとした。また、住宅性能表示制度において断熱等性能等級の上位等級(等級6、7)が設定されたことを踏まえ、これらの水準の表示。これらの外皮性能についての表示事項は、住宅における推奨事項として位置付けた。
また、住宅性能評価、長期優良住宅認定、低炭素建築物認定を取得している旨を表示している場合やCASBEE等の総合的な環境性能表示制度により国が定める省エネ性能を表示している場合、省エネ性能の表示を行なっているものとして取り扱うことが考えられるとした。
統一的な省エネラベルの表示については、認知されやすさが確保される一方、広告等において一定の表示スペースが必要になることから、より多くの販売・賃貸事業者に表示に努めてもらうための配慮・工夫点を検討すべきとしている。
また、住宅の省エネ性能を消費者に訴求するためのツールとして、住宅における表示事項の一つとして「目安光熱費」の位置付けを提示。その上で、目安光熱費を算出できるのは一定の場合に限られることから、推奨事項にすることを示した。
なお、既存建築物については、建築時に性能を評価している場合や、販売等する際に性能を評価している場合があることを踏まえると、新築と同様の省エネ性能表示を基本とすることを提示。一方で、性能評価には一定のコスト・期間を要するため、すべての物件にこれを求めることは事業者への負担が多大と考えられることから、代替措置についての検討も必要であるとした。代替措置を含め、既存建築物に対象にした表示ルールについては、既存建築物の省エネ性能の評価方法に係る技術の進展等を踏まえ見直しができるよう、告示に基づく表示ルールとしてではなく、柔軟な仕組みとして試行的に実施することを提案した。
委員からは「消費者に情報が伝達されるためには広告での表示は必須。表示場所については、具体的に限定して定めるべき」「広告や重説など、段階に分けて表示方法を変えると分かりやすい。広告段階ではシンプルで分かりすいほうがいいのでは」「長期的にみるとZEH・ZEBの中の細かい水準についても示した方がいい」「デジタルツインを用いてウェブ地図上で性能が表示される仕組みがあるといい」などの指摘があった。オブザーバーである住宅・不動産業界団体からは、「これまで省エネ表示が浸透しきれなかった要因の一つとして、買い主・借り主の物件選択時における省エネ性能ニーズが不足していたことが挙げられる。省エネニーズの喚起・感度醸成に向けた政策(支援)・発信が不可欠」「中小工務店でも容易に取り組むことができるように、省エネラベル等取得に係る手間・コストの軽減が必要」「事業者、買い主・借り主双方へのインセンティブがほしい」「表示認定までの期間短縮に向けて民間企業を活用しては」等の意見が挙がった。
今後は、12月21日に2回目を開催し、表示ルール(素案)等を検討。その後、パブリックコメントを経て、23年2月に表示ルール(案)をとりまとめる予定。同年4~6月に関連告示の公布令の公布、24年4月に表示制度の施行を見込む。